研修医必見!症例報告スライドの作り方基本ガイド
症例報告をすることになったけど、初めてで何から始めたらいいのかわからない。。。
研修医になると、院内の症例報告会や学会でスライド発表する機会があると思います。
「何度もやってるよ」という方もいれば、「まだやったことない」という方もいるでしょう。
今回は、「まだやったことない」という方に向けて、僕がこれまで何度か症例報告させていただいた中で学んだこと、スライド作成にあたって意識したことをまとめます。
もちろん、「やったことあるよ!」という方にも読んでいただきたいです。
- 泌尿器科専攻医
- 院内の症例報告会で、珍しくない症例ながらもスライドデザインと発表技術で銀賞を受賞
- 医局デザイン担当として、研究会の抄録集、ポスター、スライド、QUOカードなどを手掛け、参加者から高評価をいただいています
症例報告とは
珍しい症例や新しい疾患の診断・治療に関する治療を報告することです。
症例報告をすることで、新たな病気の予防や診断、治療に役立てることができ、報告する内容は多数に渡ります。
報告する症例の選び方は次で紹介します。
症例報告スライドを作成する前に準備すること
いざ症例報告をするとなっても、何から始めていいのかわからないですよね。
症例報告をすることが決まり、実際にスライド作成の作業に取り掛かるまでにやっておく準備について、3つのパートに分けて説明します。
報告する症例を選び、目的を明確にする
実際に症例報告をする症例とはどの様なものでしょうか。
以下に4つのポイントを紹介します。
- 普段では経験できないような稀少な症例
- 新たな検査・治療法を導入し、良い結果が得られた症例
- 治療法が進歩しつつあり、治療法自体を複数の医療者で検討したい症例
- 普段から遭遇する症例だが、診療の積み重ねにより特徴的な傾向が見られた症例
あなたが考えていた症例はどれに当てはまりますか?
このように、発表する症例を選んだ意味を確認することで、症例報告の目的が明確になり、結論を導きやすくなりますので、一番最初に考えましょう。
発表形式を事前に確認する
続いて、発表形式の確認です。
発表形式って何?
発表型式とは、ここでは下記に挙げられる様なものを指します。
- 発表時間+質疑応答時間
- 日程、提出期限
- PowerPointの形式(16:9 or 4:3)、フォント指定、動画使用の可否
- 発表5分+質疑応答3分
- 発表日時:2024年4月20日
- 提出期限:2024年4月13日までにデータを送ってください
- スライドサイズ:16:9
- フォント:MSPゴシック
- 動画:使用可
作成途中で指定されていたものと違っていたとわかったら、修正が大変なので、事前に把握しておきましょう。
参考にする学術論文を見つける環境を整える
参考にするであろう学術論文を見つけるための準備も大切です。
実際に導入パートや考察パートで、参考文献の引用元を明示するのですが、作成し始めてから探すのでは遅くなってしまうので、探す環境だけでも整えておきましょう。
具体的な論文検索方法は下記になります。
- PubMed
- 医学中央雑誌(医中誌Web)
- 科学技術振興機構(J-STAGE)
- Google Scholar
- 学会ホームページなど
症例報告スライドの作成にあたり意識すること
構成
例えば、発表時間5分であれば、せいぜい10〜15枚程度が限界です。
「枚数を増やして早口で話す」はお勧めしません
主な構成を下記に示します。
- タイトル+COI(利益相反)
- 緒言:背景と目的を明確に述べる
- 症例:主訴、現病歴、既往歴、常用薬、家族歴、生活歴など
- 身体所見:バイタル、診察所見
- 検査所見:血液検査、尿検査など
- 画像所見:X線、CT、MRIなど
- 生理所見:心電図、超音波など
- Problem、Assessment
- 治療経過
- 考察:問題解決にどこまで迫ったかを限界を踏まえて考察
- 結論:今回の症例を経験して得られた結論
- 簡単な概要とキーメッセージ
- 参考文献(番号つき箇条書き)
さらに考察部分の構成を深掘っていくと。。。
- 起:症例が示している問題点を簡潔に説明する
- 承:その問題に対して、症例が教えてくれることを深く考える
- 転:他の可能な解釈や、この考え方の限界についても考察
- 結:症例から得た知見が臨床や科学にどう役立つかを示し、今後の医療の方向性を考える
文章表現
Wordの文章などでしたら正確かつ詳細な内容が必要なため、それなりの文章量が必要となりますが、スライド発表では重要なポイントのみを記載し、あとは口頭で補強可能です。
スライド発表ならではの文章表現のポイントを示します。
- 「にて」や「認めた」は使わない
- 短い文章で簡潔にまとめる
- 「てにをは」を抜かない
- 体言止めは使わない
- 現病歴は患者が主語、治療経過は医療者が主語
実際の例を見てみましょう。
文章は長くなってしまいますが、大切なポイントです。
一度正しい文章表現で書いた上で、削れるところを探し、調整していきましょう。
図や表
図や表を作成する上でもポイントがあります。
- 表の枠線はなくす
- 数値の位置を揃える
デザイン
「このスライド見やすい!」と感じてもらうためのポイントをあげます。
- 読みやすいフォントとサイズ
- 色を減らす(3色以内)
- 統一感を意識する
読みやすいフォントとサイズ
実際に院内の症例報告会の際に使用したフォントの種類とフォントサイズを紹介します。
- 日本語:メイリオ
- 英数字:Segoe UI
- 【】:MSPゴシック
他にも「游ゴシック」がおすすめです。
普段、医局の抄読会などではこちらを好んで使ってます。
他にもたくさんフォントや組み合わせがあるので、別記事で紹介します。
次にフォントのサイズですが、厳密に言えば、オフラインなのか、オンラインなのかで変わってきます。
今回は、実際に聴者を前にして発表するオフラインの場合でのフォントサイズを紹介します。
- スライドタイトル:44pt
- 文章:24ptまたは28pt
- その他:14〜18pt
※その他=参考文献や注意書き、表やグラフの文字
まずは28ptで作成開始し、どこかのスライドで「流石に28ptはきつい、24ptなら入りそう」となったら24ptに統一するイメージです。
色を減らす(3色以内)
「たくさんの色を使って賑やかなスライドの方が、印象に残るのでは?」と思うかもしれませんが、実際はその逆なんです。
色が多すぎるといろんなところに目が行ってしまい、どこが重要なのかわからない、しまいには発表に集中してもらえなくなってしまいます。
極力色を少なくして、ベースカラー(メイン)を1つ選択し、重要な部分にはアクセントカラー(強調)、最後に文字色の3色にしましょう。
- メイン:青
- 強調:オレンジ
- 文字:黒
少し淡い方が目に優しいので、上から3番目がおすすめです!
統一感を意識する
配色が決まると自然と統一感が生まれやすくなりますが、さらに、以下の3つを意識してみるともっと統一感が出ます。
- 配色の割合
- 見えない線
- フォーマットを作っておく
そのほかに意識しておくこと
さらにちょっとした心がけでスライドがガラッと良くなる方法をいくつかご紹介します。
- 文字が多くなる場合は図表で示す
- スライドに載せるのは必要最低限の情報のみにする
- 質疑応答用に情報を取っておく
- 文章は10行以上書かない
オーベンに見せる前に最終チェック
スライドが完成しました。
「このままオーベンに見せちゃって大丈夫?」
オーベンに見せる前に最終チェックをしておきましょう。
- 匿名化されているか
- 誤字脱字はないか
- 単位間違いはないか
- 単位の前には半角スペース
- 正常値と異常値、強調ポイントを強調できているか
- 略語は初回のみfull term
- 句読点は統一されているか
- 用語は統一されているか
- 参考文献の書き方は統一されているか
- 英数字の半角と全角は統一されているか
- 菌名はイタリック(斜体)
まとめ
本記事では、実際に僕が院内の症例報告会で銀賞をいただくまでに実践したことをまとめました。
最後にスライド作成において大事なポイントを3つご紹介します。
- 構成を丁寧に練ることができれば、スライド作成もスムーズにできる
- 見やすいスライドデザインにするにはフォント・色・統一感を意識する
- スライドに載せる情報は、欲張らずに必要最低限に抑えて、スッキリしたスライドを作成する
実際に僕が作成したスライドをお見せしようと思ったのですが、個人情報に該当するものがあるので今回は控えたいと思います。
少しでも症例報告をする際の参考になれたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。