学会発表デビュー!初心者のための評価される抄録の書き方
学会発表が決まったけれど、抄録ってどう書けばいいの?

何を書けばいいのか分からず、手が止まってます…。

初めての学会発表では、多くの人が抄録の壁にぶつかります。
「でも、国内の学会なら出せば誰でも通る(受かる)んでしょ?」と思っている方もいるかもしれません。
確かに、国内学会は比較的採用率が高い傾向にあります。
だからといって「適当に書いても良い」というわけではありません。
学会の裏側では、査読者が短時間で抄録を採点し、その結果によって採否や発表形式(口演かポスターかなど)が決定されています。(学会の主幹になった際に経験)
分かりにくく読みづらい抄録は低い点数がつけられ、最悪の場合はリジェクト(不採用)になることもあります。
つまり、
- 分かりにくい抄録=低い評価(落とされるリスク・読まれない)
- 伝わる抄録=高い評価(良いセッションに選ばれる・読まれる)
この記事では、学会発表初心者の方に向けて、
- 学会査読の実態と抄録の役割
- 抄録の基本構成(IMRAD)と文字数の黄金比率
- 読者を惹きつけるタイトルの作り方
- 初心者がやりがちな失敗と回避法
- 提出前の完璧なチェックリスト
まで、高く評価され、Acceptされる抄録の考え方と書き方を具体例付きで徹底解説します。
- 泌尿器科専攻医
- 地方会ベストプレゼンテーション賞
- 医局公式デザイン担当(学会プログラム・ポスター・抄録集を多数作成)
- ココナラで医療系発表資料制作サービスを提供(累計30万円以上の実績あり)
第1章:そもそも学会抄録とは?「出せば受かる」の誤解
抄録とは、研究内容を400〜1500文字程度でまとめた要約のことです。
「学会発表は論文と違って非採択はない」という印象を持たれがちですが、実際にはそんなことはなく、複数の査読者によって採点がなされています。
査読者は発表を最初の聴いてくれる人でもあります。
点数がすべてではありませんが、わかりやすくて読みやすい抄録を書くことが大切です。
学会発表において,自分が登録した演題が採用(accept)してもらえるかどうかは,発表タイトルとその抄録の内容によって全てが決まる.国内学会では,比較的採用率が高いものが多いのに対し,国際学会では採用率が低いものも存在する.基本的に,学会の査読者は短時間で抄録を採点し,複数の査読者の採点結果によって,その演題の採否が決定される.査読者にとっては,短時間で採点をしないといけないため,わかりやすくて読みやすい抄録ほど,高い点数をつけることが多い.したがって,文字数が限られているなかで,いかに“わかりやすく,魅力的な抄録”を書けるかが重要になってくる.
さらに、抄録には以下の重要な役割もあります。
- 査読者が採点し、採否や発表形式を判断する材料
- 参加者が「この発表を聴きに行くか」を決める広告
- 将来の論文投稿時の「第一印象」を決める土台
抄録は、研究の要約+プレゼンの広告です。
「出せば通る」と油断せず、「専門外の人が読んでも短時間で価値が伝わる」ように設計することが大切です。
第2章:読者を惹きつける「タイトル」のつけ方
タイトルは、抄録の中で最も重要なパーツです。
読者や査読者はまずタイトルを見て、
- 内容が分かるか
- 新規性はあるか
- 自分の疑問に関連しているか
を判断します。
高い評価を得るタイトルの5パターン
糖尿病領域を例に、5つの基本型を示します。
- 主要キーワードを入れる
- 例:高齢2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の腎保護効果の検討
- サブタイトルで具体化する
- 例:〜:単施設後ろ向き研究
- 研究デザインを入れる
- 例:〜の多施設共同研究
- 解析方法を入れる
- 例:〜の傾向スコアマッチング解析
- 疑問形で興味を引く
- 例:〜はフレイル合併患者の予後改善に有用か?
タイトルでよくあるNG
抽象的すぎて、何を調べたのか全く伝わりません。
専門外の査読者には意味が通じず、誤読されるリスクがあります(広く一般化されているものを除く)。
良いタイトルの例
まずは悪い例を挙げてみます。
続いて良い例です。
ポイントを確認しましょう。
- 疾患・対象:高齢2型糖尿病患者
- 介入:SGLT2阻害薬
- 何を調べたか:腎保護効果と安全性
- 研究デザイン:単施設後ろ向きコホート研究
このようにタイトルを一目見ただけで分かるように設計することが大切です。
noteでも医療系学会における発表タイトルの付け方について書いているので、ぜひこちらも読んでみてください。

第3章:基本構成(IMRAD形式)と黄金比率
抄録は原則、IMRAD(イムラッド)形式で書きます。
全体のバランス(文字数の黄金比率)は、
背景・目的10%:方法35%:結果15%:考察25%:結語15%
を意識すると、非常に論理的で分かりやすい抄録になります。
① 背景(Introduction):なぜこの研究が必要か
ダラダラと一般論を語るのではなく、先行研究で何が分かっていて、何が分かっていないのか(未解決の課題)をピンポイントで書きます。
近年、SGLT2阻害薬の腎保護効果が注目されているが、75歳以上の後期高齢者における長期的な実臨床データは限られている。
② 目的(Purpose):何を明らかにしたいのか
背景の疑問に対する「カーナビの目的地」をセットします。
「本研究では〇〇を検討した」とシンプルに書き、研究の新規性をアピールします。
本研究の目的は、後期高齢2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬投与による腎機能への影響と安全性を明らかにすることである。
③ 方法(Methods):最も文字数を割くべき中心部分
初心者は結果ばかりを長く書きがちですが、抄録の質は「方法」で決まります。
第三者が読んで研究を具体的にイメージできるように書きます。
- 対象期間・セッティング
- 対象者の条件と症例数
- 介入(または曝露)の内容
- 評価項目と統計解析の手法
書くべき項目と照らし合わせながら、例を見てみてください。
2018年4月〜2024年3月に当院でSGLT2阻害薬を導入した75歳以上の2型糖尿病患者〇例を対象とした。投与前後のeGFRの変化量および有害事象の発生率を後ろ向きに調査し、対応のあるt検定およびロジスティック回帰分析を用いて解析した。
④ 結果(Results):目的(作業仮説)への回答のみを書く
初心者がやりがちな最大の失敗は、出たデータを全部書こうとすることです。
重要なのは、目的に対する直接的な答え(主要アウトカム)だけを、客観的な数値で書くことです。
主観的な形容詞(「とても多かった」「著明に改善した」など)は絶対に使ってはいけません。
投与2年後のeGFR低下速度は、SGLT2阻害薬群で有意に抑制された(-1.5 vs -3.2 mL/min/1.73m²/year, p=0.03)。一方、重症低血糖や脱水の発生率に両群間で有意差は認めなかった。
⑤ 考察(Discussion):結果の意味と「限界」を書く
考察は、得られた結果の解釈を書く場所です。
なぜその結果になったのか、臨床現場でどう活かせるのかを書くとともに、この研究の弱点・限界(例:単施設である、観察期間が短いなど)に必ず触れましょう。
限界を厳しく評価することで、逆に研究の信頼度が高まります。
後期高齢者においても、SGLT2阻害薬は安全に腎機能低下を抑制しうる可能性が示された。ただし、本研究は単施設の後ろ向き観察研究であり、未測定交絡因子の影響は排除できず、症例を蓄積し、さらなる研究が必要である。
⑥ 結語(Conclusion):一文でまとめる
「ちょっと長めのタイトル」をつけるイメージで、「背景 → 結果 → 意義」が一直線につながるようにまとめます。
後期高齢2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬は安全性を損なうことなく腎機能低下を抑制し、有用な治療選択肢となる可能性が示唆された。
第4章:初心者が陥りがちな落とし穴
文体は「である調」に統一
抄録は客観的な事実を述べる文章です。
「です・ます調」や、タイトル以外の「体言止め」は避けましょう。
発表の際には「です・ます調」です。

一文は短くシンプルに
「〜し、〜り」と文章を長く繋げず、主語と述語を明確にして短文で切るように心がけましょう。
数字と事実で語る
「多い・少ない」といった曖昧な表現は避けましょう。
倫理的配慮と個人情報保護
こちらは症例報告の場合ですが、対象者が特定されない工夫が必須です。
- 日付や期間をぼかす(例:20XX年)
- 年齢は「〇〇歳台」とする
低い点数がつく抄録の共通点
- 前置き(背景)が長すぎる
- 「方法」の記載が薄く、何をした研究か分からない
- 「目的」で書いたことと「結果」の答えが一致していない
これらは文章力ではなく構成(構造)の問題です。
第5章:提出前の完璧な最終チェックリスト
書き終えたら、以下の項目を必ずチェックしてください。
- 学会の規定(文字数制限、特殊記号の入力ルールなど)を厳守しているか
- タイトルだけで「誰に・何をしたか」が分かるか
- 「背景 → 目的 → 方法 → 結果 → 結論」の論理が一直線に繋がっているか
- 結果を客観的な「数値」と「統計データ」で示しているか
- 主観的な表現(〜と思われた、著明に〜など)を排除しているか
- 著者順は正しいか(貢献度順。筆頭演者→指導医→…→最後に責任者)
- 二重発表(既に発表した内容と同じもの)ではないか
- 第三者(指導医・共同著者)に必ず読んでもらったか
特に重要なのは、最後の「第三者に読んでもらうこと」です。
自分では気づかない論理の飛躍や説明不足が必ず見つかります。
AIを活用して抄録作成するときもあるでしょう。AI特有の違和感がなく書けているかも確認してもらうといいですね。(自分では気づきにくい)

第6章:高く評価される抄録の本質(差がつくポイント)
採用されるだけでなく、査読者から高い点数をもらえる抄録には共通点があります。
それは、 「この研究で何が分かったか」が一瞬で伝わることです。
- 目的は一つに絞られているか?
- 結果は、目的で立てた問いへの「直接の答え」になっているか?
- 結論は、結果を臨床的意義に翻訳した言い換えになっているか?
抄録作成において求められるのは、華麗な文章力ではありません。
「構造設計」がすべてです。
まとめ
抄録作成で大切なのは以下の4点です。
- IMRAD形式の型(黄金比率)に沿って書く
- 「方法」を詳細に書き、読者に研究を追体験させる
- 「結果」は数値を用いて客観的に書く
- 「目的」から「結論」までを一直線のストーリーにする
「国内学会ならどうせ通るから」と妥協せず、型に当てはめて推敲を重ねることで、査読者や参加者から高く評価される魅力的な抄録に仕上がります。
そして忘れないでください。
あなたの最高の学会発表は、スライド作りからではなく、この「抄録づくり」から既に始まっています。
応援しています!

